ヌートリアは南米に分布する大型のげっ歯類で、以前はカプロミス科に分類されていたが、現在はヌートリア科として独立している。 チリやアルゼンチン、パラグアイやウルグアイ、ボリビアやブラジル南部などの川辺や湿地帯に広く分布している。 体つきは一見してビーバーに似ているが、ヌートリアの尾は長くてネズミに似ているので、簡単に見分けることが出来る。 体毛はこげ茶色や茶色、茶褐色などで、耳は小さくて丸い。 門歯は鋭くて大きく、色も黄色やオレンジ色などでよく目立ち、この門歯は始終伸び続ける。 また、雄は雌よりも大きく、視力はよくない。 ヌートリアは川岸や湖の淵、湿地などの水辺を好み、多肉植物の多いところに生息している。 水と密着した半水生的な生活をしていて、水辺から100mを超えるようなところでは見られないと言われている。 巣は水辺近くに深くて入り組んだ穴を掘ってつくるが、水辺の草むらに草の茎や枝など使ってつくることもある。 このほか、直接水の上に植物を積み上げて、「プラットホーム」と呼ばれる浮き巣をつくることも知られている。 四肢には5本の指をもっているが、水辺での生活に適したように、後足の第1~第4指間には水かきがあり、泳ぎは大変うまい。 前足には水かきがないが、潜水能力にも優れ、時には5分程も潜っていることがある。 また、ヌートリアは主に低地で生活しているが、アンデスの1000m程の高地にも姿を見せる他、普通は淡水域に生息しているが、チリのチョノス諸島に分布するものは、汽水域や海水域などでも見られる。 主に早朝や夕方、夜間に活動し、日中は巣穴や草むらなどに潜んでいることが多い。 雌雄のペアや複数の雌雄とその子どもからなる2~13頭程のコロニー的なグループを形成して生活しているが、若い雄は単独でいるものも見られる。 行動範囲はほぼ一定していると考えられていて、雄で0.056k㎡程度、雌は0.025k㎡程度と言われ、活動している時の時間のほとんどは、採食やグルーミングに費やされている。 マコモやホテイアオイなどの水性植物の葉や茎、地下茎などを主に食べるが、陸性の植物も食べるほか、ときに軟体動物や魚なども食べる。 また、前足の第1指は痕跡的だが、他の指を器用に使って食べ物を口に運ぶ。 決まった繁殖期は見られず、繁殖間隔は5~60日と幅があり、雌の栄養状態や気候等の環境によって変化すると言われている。 妊娠期間は126~141日程度と長く、1産3~12子、普通は3~6子を出産する。 生まれたばかりの子どもの体重は225g程度で、目は既に開いている。 8週間程の授乳期間があるとされているが、ヌートリアの子どもはよく発達して生まれるので、その日のうちに草を食べはじめ、生後1日すると泳げるようになる。 この為、早いものでは5日程で授乳を終え、雌は1年に2~3回繁殖することが出来る。 また、ヌートリアの雌の乳頭は4対あるが、体側についているため、授乳は水上でも行うことが出来るようになっている。 成長は早く、雌雄共に半年ほどで性成熟し、野生での寿命は5~6年程度、飼育下では6~10年程度と言われている。 外敵は半ば水生的な生活をしているためワニなどがあげられるが、ワシなどの猛禽類に襲われることもある。 ところで、「ヌートリア」とは、元々スペイン語で (カワウソの) 毛皮の意味で、ヌートリアの上毛は荒いが下毛(灰色)は上質で密なことが知られはじめた19世紀初頭には盛んに濫獲され、生息数が激減したことがある。 その後、アルゼンチン政府の禁猟などの政策により、現在ではその数は増えている。 一方、ヌートリアは飼育下でもよく耐えるので、一時期は毛皮などを目的として北アメリカやヨーロッパなどに持ち込まれて盛んに飼育されたが、各国で逃げ出したものが野生化して問題になっている地域もある。 今ではヌートリアの飼育は寂れているが、国内でも戦前は沼狸(ショウリ、ヌマダヌキ)や海狸鼠(カイリネズミ)などと呼ばれ、毛皮や肉を目的として盛んに飼育されていた。 しかし、毛皮需要の激減や毛皮価格の暴落などに伴って、飼育されていた多くのものが放逐されたり、逃げ出したりして再野生化している。 農作物などに被害が出ている地域もあり、特に岡山県など西日本での被害は顕著で、アライグマやキョンなどと同様、特定外来生物として問題になっている。 尚、ヌートリアは、現在次の4亜種が一般的に認識されている。 ・Myocastor coypus coypus チリ中央部やボリビアなどに分布 ・M. c. bonariensis アルゼンチン北部やボリビア、パラグアイ、ウルグアイ、ブラジル南部など ・M. c. melanops チリのチロエ島 ・M. c. santacruzae アルゼンチンとチリに跨るパタゴニア地方 ヌートリア科の動物へ / このページの先頭へ |
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ヌートリア