飛んでいるのを見上げると、大きな三角形に見える白い部分がよく目立つ。 秋冬には、各地の海岸や大きな河川で見られ、水面の上空をゆっくりと舞って、魚を狙っている姿が見られる。 分布 ミサゴはタカの仲間で、南極大陸を省く世界中の大陸に幅広く分布している。 夏にはユーラシアや北アメリカの亜寒帯から温帯地域で繁殖し、北のものは冬にはアフリカ大陸の中部以南や南アメリカに移動して冬を過ごす。 また、オーストラリアにも分布していて、留鳥として生息している。 国内でも一年を通して見られる留鳥として生息している地方も多いが、北海道など北部では主に夏鳥として見られ、冬には南へ移動するものが多い。 形態 体の大きさはトビ程だが、翼を広げると145~180cm程もあり、翼開長はトビよりも長い。 また、雌雄はほぼ同じ色をしているが、平均すると雄は54㎝ほど、雌は64㎝ほどで、体は雄よりも雌の方が大きい。 頭部は白いが、目を通る褐色の帯があり、この帯はそのまま首を通って背の褐色部分へ続いている。 翼の上面も褐色や暗褐色をしているが、下面は白い部分があり、翼を広げると、腹側の白い部分と共に大きな三角形のように見える。 胸には褐色の斑が見られ、雌の斑は雄よりも大きくて暗色をしている傾向があるが、斑がないものも見られ個体差がある。 足は青みのある灰色のような色をしているが、ミサゴの足指の裏側には角質になった棘があり、これによって捕らえた魚を逃がさないようにしている。 また、多くの鳥の足指は前が3本、後ろが1本になっているが、ミサゴの足指は前後共に2本になっていて、魚をしっかりと捕らえることができる。 ワシタカ類の中では、ミサゴだけが水に潜ることができるが、羽毛はよく水を弾くようになっている。 生態・生活 ミサゴは季節によって変化があるが、国内では広く見られ、主に海岸域に生息している。 単独やペアで生活していて、大きな河川や湖沼などにも生息している。 餌のほとんどを魚が占めていて、秋冬には各地の海岸や湖沼などで、水面の上空を舞って、魚を狙っている姿が見られる。 魚をとらえる時は空中をゆっくりと舞っていて、獲物を見つけると上空で狙いを定め、素早く急降下し、両足を伸ばし鋭い爪で魚をとらえる。 爪や足は丈夫で、かなり大きい魚もとらえることができるが、獲物は離れた岩の上や樹上などに運んでから食べる。 この時、空気抵抗が少ないように魚の頭を先にして運んでいるが、ミサゴは止まり木のようなところから狩りをするようなことはない。 また、ミサゴは様々な魚類を食べているが、小鳥やヘビ、カエルや貝類などのほか、ネズミやリスなどの小型の哺乳類も食べる。 死肉を食べることは稀だが、シカの死肉を食べていることが観察されていて、海が荒れている時期などは魚以外のものも食べる。 鳴き声はあまり出さないが、繁殖期などは「ピョッ、ピョッ、ピョッ」などの声を出す。 ところで、「ミサゴ」の名前は、水の中に足を沈めて魚を捕らえる様子の「水(を)さぐる」から付けられているなどと言われているが、平安中期に編まれた辞書でもある「和名類聚抄」には、既に「美佐古(みさご)」の記述が見られ、「日本紀私記に覚賀鳥〈賀久加乃止利(かくかのとり)、公望案に高橋氏文に水佐古(みさご)と云ふ」とも書かれているので、ミサゴは「かくのとり」とも呼ばれていたことが分かる。 時代が下り、江戸時代中期に編纂された「和漢三才図絵」にも、「和名美佐古、覺賀鳥(日本紀)」の記述があり、別名・「魚鷹(ぎょよう」などとも書かれている。 「魚鷹」は、ミサゴが魚をよく獲ることから付けられているのだろうが、いずれにしても「ミサゴ」の名前の由来ははっきりとしない。 繁殖・寿命 ミサゴは季節移動するが、分布域が広いこともあり、同じ地域に留鳥として生息しているものもいることから、繁殖期には幅が見られる。 一般に、渡りを行わない群は冬から春に繁殖し、12~翌年3月頃の間に産卵し、季節移動しない群れの繁殖期は春と夏に見られ、4~6月頃に産卵すると言われている。 国内の繁殖期は4~7月頃と言われていて、稀に一夫多妻も見られるが、ふつうは一夫一婦で繁殖する。 巣は直径1.2~1.5mほどの皿状で、海や湖沼などに面した岸壁の岩棚や岸辺の岩の上、水辺に近い森林の樹上などにつくられる。 また、多くは毎年同じ巣が利用されることが多く、その場合は巣材を追加するなどして修復されるので、古いものはより大きくなっている。 巣材は雌雄が集めるが、巣作りの多くは雌が行い、新たにつくられる場合は、木の枝や枯れ草、海藻などのほか、しばしば釣り糸やビニール袋、ボール紙など、さまざまなものが利用されている。 雌は63×47mmほどの卵を1~2日の間隔で1~7個、平均すると2~4個ほどを産卵する。 抱卵は雌雄によって行われ、卵は32~43日ほどで孵化し、育児も雌雄によって行われる。 雌は、はじめの2週間ほどはほとんどヒナに付き添っていて、4週間になる頃まではヒナの傍にいることが多い。 ヒナは48~59日程で巣を離れ、自ら狩りをはじめるが、その後も2~8週ほどの間までは親から餌を与えられる。 雌雄ともに3年ほどで性成熟するが、先に孵化したヒナは体が大きいので、後から孵化したヒナよりも優位になる。 この為、競争できなくなったヒナは多くの場合死んでしまい、残ったヒナはよく多くの餌を与えられることから、生存率も高くなる。 外敵はワシやフクロウなどの猛禽類で、多くは卵やヒナが狙われるが、時に成鳥が襲われることもある。 また、アライグマや大型のヘビなどもヒナや卵を襲うと考えられているほか、時にナイルワニやカイマンなどのワニが成鳥を襲うこともある。 寿命は長く、野生下での寿命は25年を超えるものが確認されている。 しかし、平均するとこれよりは短く、生存率も若いもの(2歳未満)では約60%、成鳥のミサゴで80~90%とも考えられている。 保護状況・その他 ミサゴは分布域も広く、国際自然保護連合などでは、現在のところ絶滅の恐れはないとしている。 しかし、地域によっては個体数が減少しているところもあり、国内でも営巣地などが減少していて、環境省が準絶滅危惧に指定しているほか、自治体によっては絶滅危惧種に指定している。 尚、ミサゴには次の亜種が認識されているが、明確な分類は難しいようで、中には独立種とされるものもある。 Pandion haliaetus haliaetus 日本を含むユーラシア中部以北からアフリカ北部などに分布する基亜種 P. h. carolinensis アメリカ大陸に分布 P. h. ridgewayi カリブ海の島々に分布していて、季節移動はしない P. h. cristatus オーストラリアとタスマニアの海岸域などに分布する最小の亜種で、留鳥として生息しているが、Pandion cristatus として独立種として扱われることもある。 ミサゴ科・タカ科の鳥へ / このページの先頭へ |
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ミサゴ