動物図鑑・スマトラオランウータン

スマトラオランウータン

スマトラオランウータンさんのプロフィール


動物図鑑・スマトラオランウータン
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和 名 スマトラオランウータン
分 類 霊長目・ショウジョウ科 (ヒト科)
学 名 Pongo abelii
英 名 Sumatran orangutan
分布域 インドネシア・スマトラ島
生息環境 熱帯低地林など
体 長 雄で1.8m、雌で1.3m 程度
尾 長 尾はない
体 重 雄で50~90kg、雌で30~50kg 程度
IUCNによる保存状況評価 / 絶滅危惧種 (CR)
スマトラオランウータンは、ボルネオオランウータンなどと共に単にオランウータンとも呼ばれ、類人猿の中ではゴリラに次いで体が大きい。

自然が残る原生林に生息していて、生涯を通して樹上生活をしている。
●分布域・生息環境
●大きさ・特徴
●生態・生活
●繁殖・寿命
●保護状況・その他

●写真ページ


スマトラオランウータンの分布域・生息環境
スマトラオランウータンは、名前のように、インドネシア・スマトラ島に分布しているオランウータンだが、生息域は島の北部に限られていて、ボルネオ島に分布しているボルネオオランウータンよりも数が少ないとされている。

その多くはスマトラ島の北端になるアチェ州に生息していて、スマトラオランウータンの個体数の約80パーセントを占めている。
残りは南の北スマトラ州などに分布しているが、生息地は分断化されているところが多い。

主に低地の熱帯林や湿地林、マングローブなどが茂る河畔林などに生息していて、標高200~400m辺りで見られるが、標高1500m辺りでも見られる。

いずれも人の手が入っていない原生林に生息していて、二次林などには生息していない。


スマトラオランウータンの大きさ・特徴

スマトラオランウータンは体長1.3~1.8mほど、体重は30~90kgほどで、体は雄の方が雌より大きい。

毛色は全身が赤茶色や赤褐色、オレンジ色などのような色で、毛は長くて粗い。

口の周りには毛が生えているが、顔には毛がなく黒っぽい色をしていて、鼻と口は一緒に丸くなって突き出たような印象を受ける。
また、尾はなく、喉には大きく垂れ下がった喉袋があるのが特徴になっている。

手は非常に長く、両手を広げると2mを超え、立ち上がって手を下ろすと踝(くるぶし)まで届くほどの長さがある。

指は5本で、親指は短いが他の4本と向かい合っていて、物をつかむのに都合よくなっている。

一方、手は長くて筋肉も発達しているが、足は手に比べるとかなり短く、筋肉も発達していない。

ボルネオオランウータンとはよく似ているが、一般に、スマトラオランウータンの体はややほっそりとしていて、体毛は長く、やや顔が長くて白い毛が見られることなどが指摘されている。

また、雌雄共に長いヒゲをもっているほか、スマトラオランウータンの喉袋は、ボルネオオランウータンほど垂れ下がらないと言われている。

しかし、成熟した雄には「フランジ」と呼ばれる平たい出っ張りが頬の両側に張り出してきて、雌とはまったく違う顔になることなどは同じで、喉袋も雄の方が大きい。

スマトラオランウータンのフランジの発達は11~30歳までの間に起こり、概ね20歳頃にはフランジが形成されることが知られているが、このフランジが大きいほど優位にあると言われていて、フランジをもつ雄同士は敵対心が強いと考えられている。

また、マンドリルの顔や臀部の色は優劣などによって変化することが知られているが、スマトラオランウータンのフランジは優劣などによって変化しないとも言われている。

ただ、成熟した雄の中にはフランジがないものも見られ、一般に、フランジのある雄よりも体が小さく、機敏に動くと言われている。
やがてはフランジが発達してくるとも言われているが、これについては今後の研究が待たれている。


スマトラオランウータンの生態・生活

スマトラオランウータンは、主に熱帯低地林に生息していて、多くは標高200~400m程の果実の多い森の中で生活している。

子どもを連れた母親や繁殖の時以外は単独で生活しているが、果実の多い樹木などには複数の個体が一時的に集まることもある。

この時、幼獣や若いものは集団で遊ぶようなことも見られ、ボルネオオランウータンよりも小さな群れで過ごす時間が多く、より社会的と考えられている。

スマトラオランウータンの生態や習性などはボルネオオランウータンとほとんど同じで、活動は日中に行われ、夜間は樹上に巣をつくって休む。

巣は折り曲げた枝を中心にして、小枝や葉を用いてつくられるが、巣は毎日新しいものがつくられる。

日中に休む時も巣をつくることがあり、古巣があれば、それを修理して使うこともある。
雨が降っているときなどは、簡単な屋根を作ることもある。
また、巣は1頭ごとにつくられるが、幼獣の間は母親と一緒の巣で休んでいる。

スマトラオランウータンは昼夜を問わずほとんど樹上で生活しているが、体が大きいこともあり、樹上での動きはゆっくりとしている。

樹上では樹木にぶら下がり、体重を利用して隣の木に手が届くまで木を揺すり、枝や幹をしならせて木から木へと移動する。

その運動の様子は「ブラキエーション」とも呼ばれるが、テナガザルなどに見られるような軽快なものではなく、スマトラオランウータンは樹間を跳んで移動したすることもない。

また、体の大きい雄などは、樹上での移動が容易に行えず、時に地上を歩くことがある。
その場合、樹木が体重を支えきれないことがほとんどで、体の軽い雌や子どもは、雄のように地上に降りることは滅多にない。

地上では四足歩行するが、その時はゴリラやチンパンジーなどと違い、腕を使って体を前後に振るようにして歩く。
両手を上にあげて後足だけで歩くこともあるが、歩き方はいずれもぎこちない。

また、垂直方向にはほとんど跳び上がることができず、泳ぐこともできない。

スマトラオランウータンの行動範囲は食糧事情などによって変化するが、雌で5~8.5平方km、雄では小さくても25~30平方km程の広さをもっていると言われている。

また、雄の行動範囲は2~3の雌の行動範囲の一部と重なっているが、ほかの雄の行動範囲とは重なっていない。

コミュニケーションは様々な鳴き声をあげてとられるが、雄の声は大きく、森の中でも1km程も届くといわれている「ロング・コール」と呼ばれる非常に大きくて長い声を出すことができる。

スマトラオランウータンは主にイチジクやドリアン、マンゴスチンなどを食べ、ボルネオオランウータンよりも果実性が強いと言われている。

しかし、果実類は食べ物の60%ほどを占めているが、果実は季節や限られた場所でしか手に入らないため、若葉や花、樹皮などのほか、アリやシロアリ、コオロギなどの昆虫や鳥の卵、時にはトカゲやネズミなど、季節によって様々なものを食べる。

時々土や小石も食べることが観察されているが、これはボルネオオランウータンなども同じで、果実からでは摂取できないミネラルなどを補給している。

水分の多くは植物から得ているが、木の穴や葉などに溜まった水や、雨が降ると自身の毛に付いた雨水から水分を得ることもある。

また、稀ではあるが、スマトラオランウータンはスローロリスを狩ることが記録されている。

それらの記録は果実の多い時期ではないことから、食糧不足のために捕らえていると考えられているが、ボルネオオランウータンがスローロリスをとらえることは観察されていない。

この他、スマトラオランウータンは知能も高く、小枝を使ってドリアンの実を開けたり、蜂の巣を小枝で壊して蜂蜜をとったりすることが知られている。

チンパンジーのように樹洞に小枝を差し込んで、枝についたアリやシロアリなどを食べるようなことも観察されているが、その時、小枝を折って長さを調整したり、歯を使って形を簡単に整えたりすることもある。

雨が降っていると、大きな葉を頭上にかざして傘のように利用したり、石を使って硬い果実を叩き割るようなことも観察されている。

外敵はウンピョウスマトラトラなどが挙げられるが、一番の外敵は人間で、開発による生息地の減少が脅威になっている。


スマトラオランウータンの繁殖・寿命

スマトラオランウータンの繁殖期は果実の多い12~5月頃の雨期の間に見られるが、一夫一婦や一夫多妻など、決まった繁殖形態は見られないと言われている。

雌はより大きいフランジをもつ優位な雄を好む傾向があることから、フランジのないような雄は交尾を強要して攻撃的になったり、時には雌の子どもを奪ったりすることもある。
一方、優位でないフランジのある雄も、雌をめぐって優位な雄と争うことがある。

雌は平均妊娠期間260~275日程で、1産1~2子、普通は1子を出産するが、稀に双子を出産する。
生まれたばかりの子どもは、体重1.3~2kg程で、育児は雌が行い、雄が育児に関わることはない。

子どもは4年程で完全に離乳するが、独立した生活を送るようになるには8~9年程はかかる。
その間、母親は季節によって食べ物の選び方などを教え、子どもは充分に成長するまでは母親と一緒に生活している。

また、子どもは5歳頃までは母親と同じ巣で眠っているが、この頃からは母親の近くに自分の巣をつくりはじめるようになる。

スマトラオランウータンは、雌で12年程、雄はこれよりも遅く、14~19年程で完全に性成熟すると言われている。

雄は、この頃には母親の元を離れて行くが、雌は母親の近くに行動範囲をもつようになる。

スマトラオランウータンの寿命は50年を超えることが知られていて、野生での雌の寿命は40~53年程度、雄の寿命は少し長く、45~55年程度と言われている。

また、飼育下での寿命は55年のものが記録されているが、死亡時に62歳だったと考えられている記録も残されている。


スマトラオランウータンの保護状況・その他

スマトラオランウータンが生息する森林地帯は、開発や森林の伐採、意図的な山焼きなどによって急速に減少していて、生息数も著しく減少している。

肉を目的とした狩猟や、幼獣をペットにする目的での母親の殺害なども生息数を減少させている。

現在、スマトラオランウータンは国際自然保護連合のレッドリストに絶滅危惧種として記載されているが、絶滅がもっとも危惧されるIA類(CR)として指定されていて、更なる保護が求められている。

このほか、オランウータンは従来は1種(Pongo pygmaeus)と考えられていて、スマトラオランウータンとボルネオオランウータンはそれぞれ同種とされていた。

現在は、遺伝的に異なることなどから、いずれも独立した種として扱われていて、ボルネオオランウータンはP. pygmaeusの学名を継承し、スマトラオランウータンには新たにP. abeliiの学名が付けられている。

また、近年、スマトラ島北部に分布する一部のものが、生息地の名前を取って、タパヌリオランウータン(Tapanuli orangutan/P. tapanuliensis)と名付けられ、新たな独立種として確認されている。

これによって、オランウータンの仲間は3種になっているが、タパヌリオランウータンは、古い特徴を残したままで、小さな頭や縮れた毛などをもっているとされている。

しかし、いずれの種も生息数が少なく、オランウータンの仲間は、すべて絶滅危惧種に指定されている。

尚、「オランウータン」は、マレー語の「orang (人)」と「hutan(森)」という2つの言葉に由来していて、「森の人」という意味になるが、オランウータンの生息環境をよく表している。

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