ムクドリは国内では広く生息していて、森林や耕作地、河川周辺や海岸域など、さまざまな環境に適応している。 市街地の公園などでもふつうに見られ、夕暮れ時には大群になってねぐらへ向かう姿が見られる。 分布域 夏にはモンゴル東部から中国北東部、ウスリー地方や朝鮮半島、日本などで繁殖し、冬には中国南部や台湾に渡って冬を越すが、ベトナム北部まで下るものも多く、フィリピンやタイなどで見られることもある。 国内では一年を通して生息する留鳥として見られるが、四国と九州には少ないと言われている。 また、北海道などの積雪の多い地方では、冬には南へ移動するものも見られ、沖縄などでは冬鳥として見られる。 形態 体はヒヨドリよりはやや小さいが、全長23~24cm程度、翼を広げた長さは40cm程はあり、ツグミほどかやや大きい。 頭部は黒く、翼や背は暗褐色で、喉から胸にかけては褐色をしている。 額や目の周囲には白い部分が混じっていて、腰が白くて飛ぶとよく目立つ。 雌雄はほぼ同じ色をしているが、雄は全体に黒褐色のような色合いで黒っぽい。 雌はやや淡い色をしていて、顔に見られる白い部分もやや多い。 また、雌雄ともに足と嘴はオレンジ色や黄色をしているが、下嘴の基部には青い部分が見られる。 生態・生活 ムクドリは平野部から低山地にかけて広く生息していて、様々な環境に適応している。 森林や耕作地などのほか、河川周辺や海岸域でも見られるが、寺社の境内や市街地の公園などでもふつうに見られる。 スズメ程ではないが、人の生活圏でよく見られ、道路脇で見ることもある。 群れで生活していて、単独でいるように見えても、付近には数羽ほどのムクドリはいる。 採餌は樹上と地上のどちらでも行い、種子や果実などのほか、昆虫類やミミズ、カエルなどの両生類も食べる。 地上ではセキレイ類のように交互歩行で歩き、耕作地や公園などでも採餌していることが多い。 秋冬にはハナミズキやネズミモチなどのほか、ムクノキやエノキなどの木の実も好んで食べている様子がうかがえるが、果実ではナシやモモ、ブドウやリンゴ、カキなども食べる。 ただ、ミカンなどの柑橘類は食べないとされている。 ところで、「ムクドリ」は漢字では「椋鳥」と書かれるが、これは「椋の木に多く見られる」ことから付けられている。 「和漢三才圖會」の「林禽類 椋鳥」の項を見てみると、「むくどり、好んで椋の樹に棲む。故に俗、呼んで「椋鳥」と曰ふ。」、「堂塔に集まり、好んで椋及び川楝(せんだん)の子(み)を食ふ」と書かれている。 当時は椋木や川楝が多かったのかもしれず、実際は様々なものを食べているが、 椋の実も好んで食べていたのだろう。 いずれにしても、ムクドリは古くから人の周りで生活していて、馴染みある鳥であったことが窺える。 また、ムクドリは群れで生活しているが、夜になるとより大きな群れになって集団で休むことが知られている。 夕暮れ時になると千を超える大群が集まることも多く、里山近くの雑木林やヨシ原、竹林などで集団のねぐらをつくる。 都市部では郊外の雑木林などで夜を過ごすが、近年は街路樹などをねぐらにすることが増えていて、電線やビルの看板などを利用することもある。 ムクドリは「キュルキュル」や「ジャージャー」など様々な声で鳴くが、群れになると鳴き声も盛んで、人との軋轢が生じ、社会問題として取り上げられることもある。 繁殖・寿命 繁殖期は3~7月頃で、その間に2回繁殖することもある。 繁殖はふつう一夫一婦で行われるが、時には一夫二婦などが見られる。 ペアは冬の間に形成され、普段は群れで生活しているムクドリも、この時期にはペアで分散していき、春になると適当な営巣場所をめぐって争いが観察される。 巣は疎林の樹洞などにつくられるが、時には人家の戸袋や屋根のすき間に営巣することもあり、耕作地の中の窪みなどに巣をつくることもある。 また、石垣の間やキツツキ類の古巣などを利用することもある。 巣は枯れ草などを用いてつくられ、内側には羽毛や獣毛などが敷かれている。 巣の周囲には縄張りが主張され、雄が周囲を警戒している。 雌は大きさ29×22mm程度、重さ6~7g程の卵を4~9個ほど生み、抱卵は雌雄によって行われるが、雌が抱卵している間、雄は採餌以外は巣の近くで辺りを警戒している。 卵は12~15日ほどで孵化するが、育児も雌雄によって行われ、雛は2週間ほどで巣を離れるようになる。 ヒナはその後もしばらくは親と一緒にいるが、1か月を過ぎることには独立し、若鳥の群れに混じって生活するようになる。 また、ムクドリの生活圏はカラスの生活圏とも重なっていることから、主な外敵はカラスで、多くは卵やヒナが襲われる。 寿命は飼育下で10年程度、野生下では5~7年程度言われているが、詳しいことは分かっていない。 保護状況・その他 ムクドリは生息数が安定しているようで、国際自然保護連合などでは、現在のところ絶滅の恐れはないとしている。 国内でも各地でふつうに見られ、生息数は特に心配されていない。 一方、かつては耕作地などで害虫を食べることから益鳥とされていたが、近年は果実などの農作物に被害を与える害鳥として扱われることが多くなっている。 特に、都市部ではムクドリの集団ねぐらの問題から鳴き声や糞などの苦情が多く、ムクドリをめぐっては様々な議論がなされている。 尚、これまでのところ、ムクドリに亜種はいないとされている。 ムクドリ科の鳥へ / このページの先頭へ |
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ムクドリ