ヨシガモは、国内では主に冬に見られる中型のカモで、雌は全体に地味な色をしているが、雄は特徴のある綺麗な色をしている。 分布 夏には中国北東部やモンゴル、シベリアなどで繁殖し、気温が下がる冬季には中国南部やインド北部、インドシナ半島などへ移動して越冬する。 国内には冬鳥として飛来するが、北海道では一部のものが繁殖している。 形態 ヨシガモは中型のカモ類で、カルガモとコガモの間ほどの大きさがある。 全長48~54cm前後、翼を広げた長さは75~91cm程で、雌雄ともに嘴は黒く、目は茶色で、足は灰色から黄色がかった色をしている。 羽毛の色は雌雄で違いがあり、雄では頭部が紫色を帯びたような褐色で、目から後頭部にかけては緑色をしている。 嘴の付け根には白い斑が見られ、喉は白くて黒い横縞が見られる。 胸は灰色で細かい鱗模様があり、尾羽の付け根の裏側(下尾筒)は黒く、その側面には三角形のクリーム色い斑がある。 また、翼後方の付け根近くの羽毛(三列風切)は白黒で、長くて下へ垂れ下がっている。 この形は特徴的で、草刈り鎌のように見えることから、学名の「falcata(草刈り鎌のような)」が付けられていて、英名もこれに倣っている。 雄は全体に綺麗な色合いをしているが、雌は全体に黒褐色で、まだら模様のようにも見える。 一見するとオカヨシガモやマガモ、コガモの雌に似ているが、オカヨシガモやマガモの雌とは、嘴の色が違っていることや、ヨシガモの翼の一部(風切羽)に見られる青や緑の光沢部分(翼鏡)は緑色なので、これが確認できれば見分けることができる。 しかし、コガモとは大変よく似ていて、コガモの翼鏡も緑色をしている。 体の大きさはヨシガモの方がやや大きいが、単独でいたりすると分かりづらいので、ヨシガモの雌の頭部はコガモより頭頂部が丸くなっているほか、ヨシガモの雌には目を通る黒っぽい筋(過眼線)が見られないことなど、全体の様子を見る方がよい。 生態・生活 国内では主に冬鳥として飛来し、各地でふつうに見られる。 河川や湖沼などに多いが、内湾や海岸域でも見られる。 飛来した時には大きな群れが見られるが、次第に分散していき、ペアや小さな群れで生活している。 オカヨシガモなど、他のカモ類の中に混じっていることも多く、主に日中に活動するが、夜間も活動することがある。 主に水生植物や海藻などを食べるが、水生昆虫や甲殻類、無脊椎動物なども食べる。 地上で採餌するときは、穀類などのイネ科植物の実や種子などを食べる。 また、ヨシガモはオオバンが水底から咥えてきた水草などを横取りしたりもするが、これはオカヨシガモやヒドリガモなど、他のカモ類にも見られる。 繁殖・寿命 繁殖期は地域によってやや差があるが、概ね5~7月頃で、交配は一夫一婦で行われる。 巣は枯れ草などを用いて、水辺近くの背の高い草むらや植物が茂る藪の中などにつくられる。 巣は皿状で、ふつう内側には獣毛や自分のものを抜いたりした羽毛などが敷かれている。 雌は56×39mm程の淡黄褐色の卵を6~10個ほど産むが、抱卵も雌が行い、卵は24~28日ほどで孵化する。 ヒナはすぐに歩くことができ、親の後ついてまわり、自ら採餌する。 孵化後45~60日ほどで巣立ちするが、その後もしばらくの間は親と一緒に生活している。 野生下・飼育下ともに詳しい寿命などは分かっていないが、コガモが野生下で20年程のものが知られているので、ヨシガモも10~15年ほどの寿命はあるのではないかと考えたりする。 保護状況・その他 ヨシガモは食用や羽毛を目的とした狩猟の対象になっているが、分布域が広いこともあり、現在のところ絶滅の恐れはないと言われている。 しかし、国際自然保護連合では準絶滅危惧種として指定していて、種の保護を求めている。 国内でも狩猟の対象になっているので、生息地の保全や個体数の増減などが心配されている。 カモ科の鳥へ / このページの先頭へ |
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ヨシガモ